『ことばと思考』

今井むつみの『ことばと思考』を読みました。

なんとなくの要約 

 言語ごとに世界の認識の仕方が違うということを前提に、それがどの程度異なるものなのか、本当にことばが認識する枠組みを変化させているのか、また言語に普遍性はないのか、といったことに対して心理学?神経学?的にアプローチしている。例えば、助数詞というカテゴリーで認識の枠組みを決める言語の話者とそうでない言語の話者に認識の違いがあるのかといった実験をしている。また、本当にことばが認識する枠組みを変化させているのか、という問題に対してはことばを習得していない赤ちゃんを対象に実験を行っており、実験結果としては、赤ちゃんの認識はマウスの認識と同じようなものであった。また、ことばを使用できない特別な状態にした大人(具体的には、ヘッドホンから流れてくる物語を復唱して実験を行う)にも同じ実験をしたところ、その結果は上記と同じでマウスの認識に近いものになった。このように、思考には無意識的にことばが介在しており、そのことばが使えない状態になると、思考のレベルが低くなる。これは、ことばが認識する枠組みないしは思考の枠組みをある程度変化させていることを裏付けている。また、言語に普遍性があるのかという問題に対しては、基礎語(複合語でない語彙。日本語の場合「歩く」が基礎語で「ふらつきながら歩く」は複合語。英語の場合 walkもstagger(よろよろ歩く)も基礎語である。)が全く異なるのか、あるいは意味範囲がやや異なるだけなのかということについて言及している。結果としては、ある程度範囲の変化は認められるものの、概ね範囲が重なっているという、言語に普遍性を認めるものであった。


感想

 内容は鈴木孝夫の『ことばと文化』や『日本語と外国語』に近いものだったが、少し認知科学よりのものであり、認知言語学をやりたくなるような本であった。今勉強している生成文法と何か関連させれそうだが、言語獲得後の話なので難しそう。。。